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ガンバ大阪に関するコラム、ゲームレポート、戦術分析
by mateloss
U-23

今季から原則トップチームとの分離体制でのぞみ、わずかに5勝、最少得点&最多失点でJ3最下位に沈むU-23。

備忘録的に簡単に現状を記録しておく。


まず、サポーターズミーティング議事録からU-23の位置づけを抜き出す。

U-23チームによるJ3参戦の目的は、「試合環境を確保しての選手の育成」、前季に「4,5人での練習が日常的に多くあった」という背景受けて、トップチームとの原則分離体制での運用となっている。

前季を踏まえての課題は「90分戦い抜く精神力と、プロ仕様の体作り」、強化方針はトップチームと共通の「スピードとパスワークを中心とした全員攻撃・全員守備のトータルサッカー」。


ピッチで繰り広げられるサッカーは、

・ボールを受けて前を向ければ前に進み、次の"前に向いてプレーできるプレーヤー"にボールを回す。

・前を向けなければ後ろにシンプル戻して、別ルートから"前に向いてプレーできるプレーヤー"への展開を図る。

・パスを繋いで進めることができなければ、拘りなく中盤を飛ばしてFWあるいは相手DFライン左右のスペースに放り込む。

という極めてシンプルで、強化方針「スピードとパスワークを中心とした全員攻撃・全員守備のトータルサッカー」に沿ったもの。

特に、相手DFライン裏にスペースがあれば、デフェンシブサードからでもミドルサードからでも裏を狙いにいく、というところに強化方針を強く意識している部分が垣間見える。

チーム戦術、ゲーム戦術ともに「弱みの極小化、強みの極大化」を図るような戦術的な仕掛けは特になく、”勝ちに拘る”というよりは、個々の選手の”通用する部分”と”通用しない部分”がはっきりと見える、おそらくは育成を意識しているであろう戦い方を採っている。

J2昇格或いはクラブの存続、存在意義をかけて、大なり小なり勝つための戦術(「弱みの極小化、強みの極大化」)を採る他のJ3クラブを相手にしてしまえば、ユース年代を少なからず起用しなければならない戦力・運用体制と合せて、今の戦績も当然と言えば当然かな、という感じ。


率いるのは、おそらく歴代プレーヤーの中で最も”レジェンド”と呼ぶに相応しい宮本恒監督。

現役時代は、フィジカル的な課題・弱点を様々な工夫で自分で解決して代表や海外でプレーするまで自らを成長させた実践的な"賢さ”を備えた宮本監督。

その"賢さ"が戦術家としてどう発揮されているのかと言えば、戦術(弱みの極小化、強みの極大化)は駆使せず、前述のとおり、"育成”という位置づけと「スピードとパスワークを中心とした全員攻撃・全員守備のトータルサッカー」という方針に正直な戦い方。

強化方針の戦い方への落とし込み方、その戦い方の徹底ぶりは、戦術家としての傾向・特徴が分かるような何かを見て取ることはできない代わりに、血のなせる技というか教育家ともいうべき指導者の適正を強く感じさせる。

個人的には、例えばトルシエ流の宮本解釈での再構築とか、戦術家としての宮本らしさがどこにあるかというのを見たい気はするけれど、けれん味がない、と言うか無味無臭というか、自己を主張するより課せられた役割を奇手奇策ではなく王道で果たそうとしている、そう感じさせるところは、ある意味現役時代に通じるなぁ、とちょっと懐かしさを感じる。

「戦術家」宮本監督への期待は、たぶん次の次のトップチームの監督になるまで、楽しみにとっておこう。


U-23のプレーヤーを何人かピックアップ。


J3レベルでないことを終始示していたのが、終盤でトップに上がった中原。札幌からのレンタルということで来季の去就は不明だけど、後ろのポジションは今季から取り組んだというなかであのクオリティは特筆に価する、と思え今後が楽しみ。


他にJ3レベルでないことを示していたのが食野とユースの芝本君。


食野は、トップチームでの起用では強い印象が残らず、90分間常に違いを示し続けるということはなかったけれど、BOX内でのテクニカルなクイックネス(フィジカルなクイックネスではなく)は、2人に囲まれても引き剥がしてシュートに持ち込むことができるなど、J3レベルを超えている。1試合のうちの90分間ではなく数秒・数分にその存在意義が凝縮される、大黒的な点取屋に化ける可能性もあるかなという期待を抱かせる。


芝本君も、フィジカル的なハンデもあって、やはり90分間ずっと違いを示し続けるということはなかった。けれども、かなりの高頻度で素晴らしいパスのセンスと精度を発揮しており、このチームの攻撃の要が彼であることは10分も見れば理解できる、そういうプレーヤー。ショートパスより中・長距離、ラストパスよりラストパスの1つ2つ前のパスにセンスを感じることが多く、遠藤・市丸とも少し違う、イニエスタやシャビというよりもシャビ・アロンソ寄りなプレーヤーという印象。

市丸ともども怪我なく順調に成長すれば、あと10年はガンバのパスサッカーは安泰、そういう希望を抱かせる。


この3人ほどの強い印象は受けなかったものの、来季以降に期待したいのが、今季高卒で加入した高宇洋と3年目の妹尾。

高宇洋は、中盤の底としてはJ3レベルでも特筆すべき何かは見て取れなかった。ただ技術に確かなものを見て取ることができ、ディフェンス力やポジショニングなど、特筆すべき何かを身につけることができれば、橋本的な堅実なリンクマンになれる可能性はあるのかな、という印象。

妹尾も、高精度のクロスや止められないドリブルといったウィングとして独力でチャンスを作れる能力はないけれど、フリーランでアタッキングサードでボールを受けるセンスを感じる。あえて「遅れて」アタッキングサードへ入っていくことができるようになれば、パスの出し手次第ではアタッキングサード進入への有効な手段になる可能性がありそう。


逆に残念だったのが、今季途中で市原から帰還した西野。

昨季までトップでもある程度やれていたということもあって、格の違いを見せるものと期待したのだけれど、相次いだ怪我のせいなのか、コンディション不良なのか、残念ながらJ3レベルに埋没してしまっていた。CBの戦力の薄さ(数よりクオリティの面で)を考えれば、ファビオ、三浦のバックアップとして目処がたってほしいところ。しかし、J3での現状を見ると、強化部門が岩波(神戸)の獲得に向かったとしても致し方ない、残念だけれどそう思わざるを得ない。


by mateloss | 2017-11-04 11:48 | Column
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